23生理心理学特殊研究

授業の目的
生理心理学で扱われるさまざまなテーマのうちから、本授業では特にストレスマネジメントに焦点をあて、客観的測定法によるストレス評価や、リラクセーション法によるストレス緩和など、現場で役立つ知識・技能の習得を目的とする。具体的には、簡易測定装置を実際に用いることにより、心拍数、発汗活動、末梢皮膚温の変化によるストレス評価手法を学ぶ。さらに、これらの測定指標を用い、自律訓練法やバイオフィードバック法といったリラクセーション法を実践し、ストレスマネジメントへの応用方法を習得する。

到達目標
1.脳の機能と感情、身体反応の関係を説明できるようになる。
2.各種生理指標を用いてストレス度を評価できるようになる。
3.各種リラクセーション法の実践法を人に伝えられるようになる。

スケジュール
ガイダンス
脳の機能と感情

生理心理学特殊研究-06

前回授業リアクションへのフィードバック
 前回はストレスと内分泌・免疫系の関係をお話しました。なかなかにややこしい話であったかと思いますが、「心と内分泌・免疫が関係しているのは偶然ではない」ということと、「ポジティブな心的状態を保つ事は健康維持に重要」という2点に尽きると思います。いろいろなご意見をいただいたので、考えるきっかけにして下さればと思います。

論文紹介
 今日から論文紹介に入っていきたいと思います。まず最初は私からはじめ、オンデマンド形式でどうにか論文紹介をしていきたいと思います。生理心理学特殊研究の論文紹介チャンネルをご覧ください。
 論文紹介の手順は、下記動画に準じてください。各自で論文紹介を行う動画をご用意いただき、Teamsにアップロードしていただきたく思います。動画撮影はやりやすい方法で行っていただければ結構ですが、Bandicamを利用するのがオススメです。下の「Bandicamの使い方」もあわせてご覧ください。

論文紹介は下記順序で行って参りたいと思います。順番が近くなってきたら、資料をご用意下さい。自分が紹介する論文をどれにすべきか迷う場合は、チャットでご相談下さい。

5/19 21mh202
5/26 21mh208
6/2 21mh206
6/9 21mh201
6/16 21mh204
6/23 21mh205
6/30 星野紗希 21MH209

リアクションの記入
  論文紹介の期間は、Teams上に紹介された論文に対する感想をお書き下さい。

生理心理学特殊研究-05

前回授業リアクションへのフィードバック
 前回は評価的観察やソーシャルサポートの影響を心臓血管系指標の側面から検討した事例を紹介しました。他者のサポートをするためにはどのような事に注意すべきか、考える機会となれば幸いです。

内分泌・免疫系
 今日はストレスと内分泌・免疫系反応の関係をおおまかに解説します。コルチゾールのような内分泌系だけでなく、免疫系も心の状態に密接に関係することが近年の研究から明らかになっています。「病は気から」、「短気は損気」などのことわざも、意外に深い含蓄があることがわかります。2本目の論文紹介動画と一緒にご覧ください。

リアクションの記入
  上記の動画を視聴し、下記アドレスから、授業当日から3日以内にリアクションを登録してください(リアクションは出欠記録を兼ねています)。
生理心理学特殊研究リアクション

生理心理学特殊研究-04

前回授業リアクションへのフィードバック
 前回の授業にも様々な意見をいただき、興味深く拝見させていただきました。今回は諸事情ありオンデマンド形式となってしまいましたが、皆さんが予想以上にたくさんの意見をくださるので、「直接話ができたらなぁ」と思いながらリアクションを読んでおりました。

血圧
 今日は血圧やヘモダイナミクスの話を、ストレス研究とからめて説明していきます。最後はエンタテインメント(ゲーム)研究への応用事例も紹介しております。

上記動画中で紹介されている論文をリンクしておきます↓
評価的観察が精神課題遂行中の心臓血管反応に与える影響
支援的他者の存在が心臓血管反応に与える影響


リアクションの記入
  上記の動画を視聴し、下記アドレスから、授業当日から3日以内にリアクションを登録してください(リアクションは出欠記録を兼ねています)。
生理心理学特殊研究リアクション

生理心理学特殊研究-03

前回授業リアクションへのフィードバック
 前回の授業にも様々な意見をいただきました。オンデマンド形式の授業ではありますが、リアクションとフィードバックを大事にしていくことで、みなさんとディスカッションを深めていければと思います。

神経系と心臓血管系2
 今日は引き続き心臓血管系について解説を進めていきます。心拍数、心拍変動、血管活動の指標としての指尖容積脈波などを解説していきます。

リアクションの記入
  上記の動画を視聴し、下記アドレスから、授業当日から3日以内にリアクションを登録してください(リアクションは出欠記録を兼ねています)。
生理心理学特殊研究リアクション

生理心理学特殊研究-13

レポート課題について
 高次脳機能障害に関するレポート作成課題では、主要な症状の内どれか一つにターゲットを絞り、文献を読んでいただきました。皆さんが今回選んだテーマは、実行機能障害、注意障害、失語症の3つでした。
 実行機能障害や注意障害は、通常生活を送っている我々にとっても無縁ではなく、その症候に関しても「まったく心当たりがない」と思う人は、むしろ少数ではないかと思います。「ここからが障害」といった基準が不明確で、多くの人が「やる気が出ない」、「集中できない」、「ある種の作業が非常に苦手」などの症状に悩まされているわけで、障害の原因や有効な対処法の理解は、一般人にも多くの利益があると思います。一方、失語症は、レポートにも書いてくださったとおり、すごく多くの分類があり、一口に失語症と言っても、聴覚的理解、読解、発話、書字などのうち、どのような言語機能の障害かによって細分化するようです。その全貌を、患者に触れること無く理解しようという試みは、なかなかに困難を伴うように思えます。
 とはいえ、将来臨床に出る方も出ない方も、高齢化が急速に進んでいく日本社会では、病院で、路上で、あるいは家庭で、高次脳機能障害を持つ方々遭遇する機会は、必然的に増えていきます。考えてみれば当然ですが、多くの人々は、このような障害により、仕事をなくしたり、周りに理解されないなど、社会的な孤立を味わっています(と本に書いてありました!)。心理学を学んだ我々は、困難を乗り越え社会に適応しようと頑張る人々に、対話を通して心情的に寄り添うところからスタートすれば良いのではないかと思います。

まとめと振り返り
 この授業には、1.感情の背景となる身体機能の理解、2.高次脳機能障害の理解、3.ストレスマネジメントに役立つ知識の獲得、という3本の柱がありました。1と2に関しては、公認心理師資格を目指す方は、試験に出るので、ある程度の内容を、整理して頭に入れておく必要があります。苦手意識がある方は、試験対策の参考書籍があるので、早めに入手して、今のうちから興味を持って調べておく事をおすすめします。独自にノートを作ったり、勉強会を開いたりする事も良いと思います。
 3のストレスマネジメントに関しては、私も含め4人がストレス関連の文献をまとめ、共有しました。急性ストレス刺激を用いた実験的研究において用いる課題や、ストレスを測るための指標にはどのようなものがあるのか、知識が深まったと思います。指標としては、やはり主観的指標、つまり質問紙が多彩であり、GHQやPOMSをはじめ、用途に応じた様々なものが紹介されました。客観的な指標としては、自律神経系指標、内分泌系、免疫計の指標などが紹介されました。自律神経系指標が瞬時的に反応が生じるのにくらべ、内分泌系や免疫系指標は反応潜時が長く、分析コストが高い傾向にあります。一方で、慢性ストレスを調べるには内分泌系や免疫系指標の方が適しています。ストレスマネジメントに関しては、バイオフィードバックや各種のリラクセーション(自律訓練法や漸進的筋弛緩法)の紹介が行われました。これらの手法は、独自の学術的背景を持ち、いずれも特定の身体機能の自己制御を目的としています。つまり、リラクセーション、ストレスマネジメントといったテーマの本質は、結局のところ自己制御であることを意味しています。意外に思うかもしれませんが、自己制御の基本は、「測定」です。何を測定するのか?生理指標も、なんなら感情も、人間の行動の一部と言えましょう。つまり、これらの心理療法は、体系的には実は「行動療法」に属しています。
 この授業では、全員が作成したレポートを共有しますが、今後も各種心理療法の授業や学会参加等を通し、行動療法的なアプローチに関する理解を深めていっていただければ幸いです。

追加課題について
 休講となっていた2回ぶんに関し、追加課題を行います。以前ディスカッションにおいて指摘した点(特に引用の件は重要)に関し、各自のレポートを改善し、「心理学特殊研究チーム>授業0805>ファイル>ストレスマネジメントに関するレポート」フォルダに入れておいてください。その際、論文等に引用できるよう、引用文献リストを作成するようにしてください。これらの作業をもって、本授業の追加課題とします。

生理心理学特殊研究-14~15

高次脳機能障害
 今週(7/14)と来週(7/21)は、高次脳機能障害を扱います。動画でご覧になる方は下記のYoutubeを、文章で読みたい方はその下をお読みください(内容は一緒です)。この授業は、各自高次脳機能障害に関する論文を読んで、レポートとしてまとめて提出することで終了とします。課題はこのページの最下部に指定されておりますので、それに従ってレポートを作成&提出してください。

高次脳機能障害(higher brain dysfunction)とは
 脳損傷に伴う認知行動障害をあらわす包括的な呼称であり、大脳の器質的病因に伴い、失語失行・失認に代表される比較的局在の明確な大脳の巣症状、注意障害記憶障害などの欠落症状、判断・問題解決能力の障害情緒や社会的行動の障害などを呈する状態像。高齢化が進む現在、全国に約50万人いるとされ、いまや高次脳機能障害についての知識は心理系資格取得を目指す者には必須であると言える。生理心理学との関係では、各障害の背景となる脳の部位や機能について理解を深める事が大切である。

 原因疾患として最も多いのは、脳血管障害(くも膜下出血含む)と頭部外傷である。脳血管障害は高齢者に多く、頭部外傷は若者に多い。その他、脳炎、脳腫瘍、無酸素脳症などの病因がある。
 働き盛りの患者が脳血管障害や頭部外傷で働けなくなった場合、心理士は医師、理学療法士、作業療法士などと連携して働く必要が出てくる。神経心理学的検査を担当するとともに、高次脳機能障害を持つ人の心の問題によりそう事が重要になる。

 このページは長く情報量も多いので、高次脳機能障害の症状についててっとり早く知りたい場合は、西多摩高次脳機能障害支援センターのページ(各症状がマンガと文で紹介されている)や、医療法人財団慈強会松山リハビリテーション病院のページPOSTなどをご覧になるとよい。また、脳部位の機能が知りたい場合は、難病 パーキンソン病患者と共に生きるなどのページが役に立つ。



注意障害
 注意とは,外的事象(環境刺激)や内的表象(考えや記憶)のなかで,最も重要なものを選択し,脳の処理資源をふりわける機能である。障害すると,他の認知機能の制御や変調となって現れる。Sohlbergら(2001)は,注意の特性を5つのコンポーネントに分け,下層の機能は上層の機能が正常に働くための基礎になるとした。つまり注意の機能には、段階があると言える。

 一方、Posner(1990)は注意を3つの機能に分け説明した。Alerting(警告)」は周囲を警戒し,機敏に反映する状態を維持するもので,視床,皮質前方および後方領域が関係する。「Orienting(定位)」は感覚情報から必要なものを選び出し,空間の特定の方向や領域へ意識を向ける機能で,頭頂葉,前頭葉眼球運動部が関与する。「Executive Control(実行制御)」は情報処理どうしの競合を解消する機能であり,帯状回前部を中心とした領域が関与している。

 注意障害を理解するうえで、知っておくべきキーワードがワーキングメモリ展望記憶である。
 ワーキングメモリは、なにかの認知課題をしながら,頭の片隅に処理可能な状態で記憶にとどめておく能力であり,ながら記憶に相当する。ワーキングメモリ容量は注意課題の成績に関係するため,ワーキングアテンションとも言われる。このワーキングメモリの検査がしばしば障害の程度の判定に用いられる。
 展望記憶は、未来に行うことを意図した行為の記憶。日常生活における記憶の失敗の大半は,展望記憶に関連するものであると言われる。日常生活では「~し忘れる」という形で現れる。こちらも障害の程度を判断する際に、広く用いられる。


記憶障害(健忘症) 
 健忘症は,脳障害により新しいことが覚えられない,あるいは覚えていたことを思い出せなくなる事を特徴としている。作話や見当識障害などの症状を伴うことも少なくない。
 記憶は、記銘・保持・取り出しの3過程から構成され、健忘症はこれらのいずれかの障害により生じる。発症時を基準として,古い記憶の障害を逆向性健忘,新しい記憶の障害を前向性健忘という。

 側頭葉内側部(海馬)が傷害されると、重度の前向性健忘が生じる。間脳(視床)は脳の中心部にあり、コルサコフ症候群の責任病巣である。前脳基底部は、前頭葉眼窩面にありくも膜下出血で損傷を受けやすい。

 健忘症に頻発する併存症候は、作話見当識障害病識低下である。作話は、記憶の欠落を埋め合わせようとする働きによって,結果として嘘を言ってしまう症候。本人の意図なく行われる。健忘症患者に最もよく認められる症状である。見当識障害は、時間や場所についての誤った認識を指す。人についての誤った認識をさすこともある。病識低下は、自分の記憶障害に対する自覚や洞察力の低下を指す。多くの患者は,自身の健忘を自覚しない。
 関連する疾患として有名なのが、コルサコフ症候群であり、長期記憶の前向性健忘と見当識の障害を伴う逆向性健忘が同時に起こる。健忘に対し、作話でつじつまを合わせようとすることも特徴である。思考や会話能力などの知的能力に、目立った低下は見られず、健忘症の典型とされる。



遂行機能障害

 遂行機能障害は目的のある行動を効果的に行えない事を特徴としている。自ら行動を開始しない、障害に気づいていないこともあり、就労に際して大きな障壁となる。遂行機能は、家事・料理・買い物・仕事・外出・旅行など日常生活のあらゆる場面で必要となり、問題解決に用いられる認知能力のことである。

(1)意思あるいは目標の設定
 状況や環境を把握し,目標を明確にし,目標を維持する能力。
(2)計画の立案
 問題解決に必要な手段・技能・材料・人物などを想起,解決のためのアイデアを発案する生成的思考,認知的柔軟性が必要。それらを評価して取捨選択,構成する能力。
(3)目的のある行動もしくは計画の実行
 一連の行動を,正しい順序で適切な時に開始し,維持し,中止する能力。計画の内容を維持するにはワーキングメモリが,適切なタイミングで開始するには展望記憶が必要。
(4)効果的に行動する
 自分が何をしているのか,自分の行動が計画どおりに行われているのかを監視し,必要に応じて自分の行動を修正するアウェアネス・セルフモニタリングの能力

 遂行機能には前頭葉が大きく関与している。
 前頭葉内側領域・・・  発動性と動機づけ
 眼窩部・副内側部・・・  反応抑制に関わり損傷すると衝動性亢進,不適切な情動反応が生じる。
 背側円蓋部・・・  行動や思考の整理,順序化,時間調節行動
 前頭葉傍矢状領域・・・  創造性,流暢性,認知柔軟性,問題解決スキル


失語症
 大脳の後天性損傷による言語機能の障害のこと。言語機能には、聴覚的理解、読解、発話、書字など様々あり、失われる機能の種類に応じて,様々なタイプの失語に分類される。

 古くから言語野と知られている部位には、ブローカ野とウェルニッケ野がある。それぞれが病因となって生じる失語は、ブローカ失語、ウェルニッケ失語と呼ばれる。ブローカ失語は、単語レベルでの理解は良好だが、非流暢で発話量が減少し、句の長さが短くなる。発話速度の低下やアクセントの平板化などによりたどたどしい話し方になる。ウェルニッケ失語は、単語レベルの理解も難しい比較的重度の理解障害を呈する。発話は流暢だが、様々な種類の錯語や新造語を含み、ジャルゴン(全く意味不明な発話)となることもある。


失行・失認
 失行とは、その運動・行為を行うために必要な運動機能が保存され,何をするのかもわかっているし,それに必要な対象も認知できているのにもかかわらず,目的とする運動・行為ができないことである。
 Liepmannによれば、人の行為は,行為のアイデア(観念)を想起し,それを運動に関する記憶痕跡(運動エングラム)につなげ,最終的に筋肉を動かして運動する3つの心理過程に分けられるという。失行は、肢節運動失行は運動エングラムの障害、観念性運動失行は観念とエングラムの橋渡しの障害、観念性失行は行為のもととなる観念の障害に分類され、Liepmannの古典的失行3類型と呼ばれる。

 失認とは、視覚・聴覚・体性感覚などの感覚は保存され、知覚しているが、それを意味と結びつけて出力する過程に障害が生じた状態。視覚、聴覚、触覚性失認がある。見えているのに、聞こえているのに、触っているのにわからない状態である。他の感覚を使えば、それが何であるのか即座にわかるのが特徴。


社会的行動障害・情動障害
 前頭葉障害・大脳辺縁系の機能障害により,感情・欲求コントロールの低下,固執性,対人技能の拙劣,意欲の低下,依存や退行などの症状が生じるもの。その他,記憶障害注意障害遂行機能障害による不適応が困惑,孤立,不安につながり社会的行動障害につながる。社会的行動障害・情緒障害として一般的な症候を下記に示す。

 情動障害に関連する脳部位としては、Papez回路・Yakovlev回路という扁桃体を中心とした回路があげられる。これらは、情動や感情に関係する神経ネットワークとして知られている。嬉しい,楽しい,悲しいのような情動に関する記憶は,記憶にのこりやすい。海馬と扁桃体は近隣部位で,ふたつの回路が相互作用することで,感情的な記憶が生じると考えられている。


高次脳機能障害に関するレポートの作成
 高次脳機能障害を扱った書籍もしくは論文(できれば複数)を読み、2000~3000字程度のレポートを作成してください。その際、上記の6障害+認知症のうち、興味のある1~2の障害に関し、自分なりに掘り下げ、学習の機会にしてください。レポートの内容は、1)読んだ文献の概要説明、2)感想(自分なりの理解、今後高次脳機能障害者とどのように接するべきか等)としてください。ワード形式で、ファイル名を「高次脳機能障害レポート」という名前で作成し、この授業に対するリアクションと一緒に、下記リンクの「課題ファイル」から、7月末日までに送ってください。
生理心理学特殊研究リアクション

生理心理学特殊研究-01

ガイダンス
 生理心理学特殊研究を受講の皆様、こんにちは。授業の目的と到達目標に示される通り、この授業はストレスマネジメントに焦点をあて、皆さんが将来的に臨床心理の現場で役立てられるような知識やスキルを身につけることを目的としています。例年は測定装置を使い、バイオフィードバック等のリラクセーション法の実体験を行いますが、本年度は対面授業を行いにくい状況にあるため、講義や文献講読を中心に構成し、途中で可能であれば、生理指標の計測体験も加えていきたいと思います。

 講義で心身相関現象の概要を理解した後、各自生理指標の測定を含む文献を読み、紹介してもらおうと思います。その際、生理指標を用いたストレス研究は、下記の様なジャーナルから選ぶと良いかもしれません(下記以外から選択しても構いません)。

生理心理学と精神生理学
健康心理学研究
行動医学研究
バイオフィードバック研究

 内容は、直接ストレスマネジメントに関わる研究の他、マネジメントまでいかずともストレス反応にかかわる実験研究でも構いません。文献紹介後のディスカッションで、どのようなストレスマネジメントに応用可能か、アイデアを出し合えればと思っています。

ストレス科学の概要
 今回はガイダンスということもあり、下記動画をご覧いただき、ストレス科学の成り立ちをひととおり理解していただきたく思います。多くの理論が、自律神経系、内分泌系、免疫系の3系統にストレス反応が現れることを指摘している点に注目してください。

リアクションの記入
  上記の動画を視聴し、下記アドレスから、授業当日内にリアクションを登録してください(リアクションは出欠記録を兼ねています)。また、今回は初回ということもありますので、上記に示した進め方で良いか?他にも何か「こういった事をしたい」といったアイデアがあれば、お書きください。
生理心理学特殊研究リアクション

生理心理学特殊研究-02

脳の機能と感情
 感情は大脳辺縁系により生じると言われるが,大脳辺縁系の活動は新皮質からの影響を受けており、(前頭葉などの)大脳新皮質はしばしば大脳辺縁系による感情の変化を抑制するように働く。さらに大脳辺縁系は,視床や下垂体に影響を与え,様々な身体反応を生じる。つまり、下記のような順序での感情表出が想定される。

1.大脳新皮質 → 2.大脳辺縁系 → 3.視床・下垂体→4.身体反応

図  脳科学から「怒り」のメカニズムに迫る! カチンと来ても6秒待つと怒りが鎮まるワケ

 大脳辺縁系は、扁桃体、海馬、側坐核、視床、視床下部、などから構成される。各部位の場所と働きは、様々なWebサイトにわかりやすくまとめられている(参考サイト1参考サイト2)。公認心理師の資格試験の際、「生理」の区分から、主要な脳部位の名称や機能に関する質問が出る可能性があるので、抑えておく事が望ましい。
キーワード:「情動回路(ヤコブレフ回路)、「記憶回路(パペッツ回路)」

感情と身体反応を媒介する3つの系
 脳内で生じた感情は様々な身体反応を引き出す。これがいわゆるストレス反応となる。身体反応は、神経系、内分泌系、免疫系、を介して現れる。

神経系は、中枢神経系と末梢神経系、さらに末梢神経系は自律神経系と体性神経系にわかれる。神経系は内分泌系に比べ早く反応するが、持続時間は短いという特徴がある。神経系の中でも、特に自律神経系の働きは、感情やストレスと密接な関係にある。多くの臓器は、交感神経と副交感神経の双方から支配を受けており,その影響は拮抗的である(参考サイト)。ストレスを受けると,心拍数や血圧の上昇、血管の収縮などの両神経のバランスが破れ,内蔵機能の失調が生じる(参考文献1参考文献2)。
キーワード:交感神経、副交感神経

内分泌系は、ホルモンを生成して、身体の様々な機能を調節する。ホルモンは、視床下部、下垂体、甲状腺、副甲状腺、膵臓、副腎、性腺で生成される。ホルモンは血中に放出され体内を循環するため、神経系よりゆっくり伝わるが、効果が持続しやすい特徴がある。ホルモンによる身体機能調節には様々な経路があるが、ストレスに大きく関係するのが「交感神経-副腎髄質系」と「視床下部-下垂体前葉-副腎皮質系」である。前者は情動ストレスや身体ストレスによりカテコールアミン(アドレナリンとノルアドレナリン)を分泌し、心臓や血管など様々な臓器に影響を与える。後者は、脳下垂体前葉から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を介して、コルチゾールを分泌し、肝臓における糖新生,心収縮力増大,血圧上昇などをもたらす。緊急事態ではストレスホルモンが分泌され、身体を危険から守る働きをするが、長期のストレスに晒されると神経系や免疫系に悪影響をもたらす(参考サイト参考文献1参考文献2参考文献3)。
キーワード:アドレナリン、コルチゾール、副腎皮質、副腎髄質

免疫系は、細菌やウィルスが身体に侵入しないよう、身体を守る仕組みであり、白血球が担っている。免疫系は、マクロファージやNK細胞からなる自然免疫、B細胞・T細胞からなる獲得免疫にわけられる。自然免疫が、反応が早いが特異性が低いのに対し、獲得免疫は遅いが特異性が高い。これらは互いに作用しあい、病原体の発見と排除を行う。これらの免疫細胞には、各種の神経伝達物質やホルモンに対する受容体が存在する。そのため、免疫機能は心理ストレスにより自律神経系、内分泌系を介して影響を受け、特に長期のストレスに晒されると様々な疾病にかかりやすくなることが知られている(参考サイト参考文献1参考文献2参考文献3)。
キーワード:マクロファージ、NK細胞、B細胞、T細胞

ホメオスタシスとアロスタシス

リアクションの記入
下記アドレスからリアクションを登録してください(リアクションは出欠記録を兼ねています)。
生理心理学特殊研究リアクション