生理心理学特殊研究-02

脳の機能と感情
 感情は大脳辺縁系により生じると言われるが,大脳辺縁系の活動は新皮質からの影響を受けており、(前頭葉などの)大脳新皮質はしばしば大脳辺縁系による感情の変化を抑制するように働く。さらに大脳辺縁系は,視床や下垂体に影響を与え,様々な身体反応を生じる。つまり、下記のような順序での感情表出が想定される。

1.大脳新皮質 → 2.大脳辺縁系 → 3.視床・下垂体→4.身体反応

図  脳科学から「怒り」のメカニズムに迫る! カチンと来ても6秒待つと怒りが鎮まるワケ

 大脳辺縁系は、扁桃体、海馬、側坐核、視床、視床下部、などから構成される。各部位の場所と働きは、様々なWebサイトにわかりやすくまとめられている(参考サイト1参考サイト2)。公認心理師の資格試験の際、「生理」の区分から、主要な脳部位の名称や機能に関する質問が出る可能性があるので、抑えておく事が望ましい。
キーワード:「情動回路(ヤコブレフ回路)、「記憶回路(パペッツ回路)」

感情と身体反応を媒介する3つの系
 脳内で生じた感情は様々な身体反応を引き出す。これがいわゆるストレス反応となる。身体反応は、神経系、内分泌系、免疫系、を介して現れる。

神経系は、中枢神経系と末梢神経系、さらに末梢神経系は自律神経系と体性神経系にわかれる。神経系は内分泌系に比べ早く反応するが、持続時間は短いという特徴がある。神経系の中でも、特に自律神経系の働きは、感情やストレスと密接な関係にある。多くの臓器は、交感神経と副交感神経の双方から支配を受けており,その影響は拮抗的である(参考サイト)。ストレスを受けると,心拍数や血圧の上昇、血管の収縮などの両神経のバランスが破れ,内蔵機能の失調が生じる(参考文献1参考文献2)。
キーワード:交感神経、副交感神経

内分泌系は、ホルモンを生成して、身体の様々な機能を調節する。ホルモンは、視床下部、下垂体、甲状腺、副甲状腺、膵臓、副腎、性腺で生成される。ホルモンは血中に放出され体内を循環するため、神経系よりゆっくり伝わるが、効果が持続しやすい特徴がある。ホルモンによる身体機能調節には様々な経路があるが、ストレスに大きく関係するのが「交感神経-副腎髄質系」と「視床下部-下垂体前葉-副腎皮質系」である。前者は情動ストレスや身体ストレスによりカテコールアミン(アドレナリンとノルアドレナリン)を分泌し、心臓や血管など様々な臓器に影響を与える。後者は、脳下垂体前葉から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を介して、コルチゾールを分泌し、肝臓における糖新生,心収縮力増大,血圧上昇などをもたらす。緊急事態ではストレスホルモンが分泌され、身体を危険から守る働きをするが、長期のストレスに晒されると神経系や免疫系に悪影響をもたらす(参考サイト参考文献1参考文献2参考文献3)。
キーワード:アドレナリン、コルチゾール、副腎皮質、副腎髄質

免疫系は、細菌やウィルスが身体に侵入しないよう、身体を守る仕組みであり、白血球が担っている。免疫系は、マクロファージやNK細胞からなる自然免疫、B細胞・T細胞からなる獲得免疫にわけられる。自然免疫が、反応が早いが特異性が低いのに対し、獲得免疫は遅いが特異性が高い。これらは互いに作用しあい、病原体の発見と排除を行う。これらの免疫細胞には、各種の神経伝達物質やホルモンに対する受容体が存在する。そのため、免疫機能は心理ストレスにより自律神経系、内分泌系を介して影響を受け、特に長期のストレスに晒されると様々な疾病にかかりやすくなることが知られている(参考サイト参考文献1参考文献2参考文献3)。
キーワード:マクロファージ、NK細胞、B細胞、T細胞

ホメオスタシスとアロスタシス

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生理心理学特殊研究リアクション