専門演習Ⅳ-01

ガイダンス
 心理学専門演習Ⅳを受講する皆様、半年間よろしくお願いします。初回は、私が皆さんにお教えする生理心理学という学問がどのようなものなのか、過去の卒業研究を振り返ることを通してお伝えしたいと思います。その中から、皆さんが各自の興味あるテーマを見つけてくだされば良いと思います。

扱われているテーマ
 次のページに、過去に行われた卒論をテーマ別に分類してみました。分類に関しては、なかなか難しい側面はありますが、テーマは主に[ストレスとリラクセーション][エンタテインメント]、[認知・感情]、[教育]、[運動]、[その他]に分けられるようです。まずは下記のリンクを1分ほど眺めてみてください。
リンク:テーマ別過去の卒論一覧

ストレスとリラクセーションに関する研究で、用いられるストレスは、計算課題のような 単独で行うものと、会話やスピーチのような社会的(対人的)なものがあります。これらの研究は、ただストレス反応を測るのではなく、自尊感情等の様々な人格傾向が、どのようにストレス反応を変容させるのか?のように「心理学的な問」を含んでいる事が特徴です。一方で、それ以上に人気があるのは、ストレスをどのように迎え撃つか?という、いわゆるストレスマネジメント手法に関する研究です。その手法は、香りや映像を使うもの、読書、絵本の読み聞かせ、水槽を眺めるもの、バイオフィードバック、人に話したりする対人的なもの、さらにはロボットを使ったものまで、多種多様です。やはり、日常生活でどのようにストレスを迎え撃ち、コントロールするのかというのは、皆さんの興味の対象となりやすいようです。

エンタテインメントに関する研究も多く選択されています。課題は、デジタル系と非デジタル系に分類されます。前者は、落ち物(テトリスなど)、格ゲー(ストⅣ)、レース(マリオカート)、乱闘もの(スマッシュブラザーズ)などのビデオゲームが多いです。近年では、VRやスマホゲームを使用した例もあります。ホラー映画やアニメーションを用いた研究もデジタル系に入るでしょうか。一方で、ダーツやオセロ、ラジコンカー、塗り絵など、非デジタル系エンタテインメントの研究も多彩です。中には、ただアイドルの画像を眺めたり、お菓子を食べることの効果に注目したものもあります。「ゲームを用いた研究なんて」と思われる方もいるかも知れませんが、ポジティブな感情が体にもたらす効果の研究はとても重要です(ポジティブ心理学)。一方で、ただゲームをするような研究は少なく、「競争・共同」などの社会的要因や「提示方法の違い」など、各種の心理学的要因をからめて研究する事が多いのが特徴です

認知・感情に関連するテーマに分類したのは、ストレスやエンタテインメントには該当しない、より基礎的な研究です。人物の魅力や印象を生理指標を用いて検討するもの、ゲームエンジンUnityを使って3DCGを用いた実験刺激を作成し使用しているもの、VRゴーグルやアイカメラなど、各種の新しいデバイスを利用したものが含まれます。CGやVRといった新しい技術を使うことにより、高い臨場感を実現し、今まで難しかったようなリアルな感情喚起を期待するものです。また、これらの研究では、心拍数や発汗のような基本的な指標だけでなく、血圧や筋電図や脳波、視線や加速度などの計測にも挑戦している点が特徴です。

教育に関するテーマも最近増えつつあります。これは、小学生や高校生を対象に心理学を教える教育プログラムの開発と実施に関するものと、実際の教育現場を想定し、教授者や学習者の生理反応から授業を評価しようというものに分けられます。本学で開発された生体計測装置を用いた授業評価研究が、他大学・研究機関との共同研究として始まりつつあります。教育方面に興味がある方は、一緒にできると良いなと考えています。

運動に関するテーマは試合時のプレッシャー克服、生体情報フィードバックによる成績向上、CGやVRを用いた運動促進効果の検討などから成り立っています。これらのテーマは、どれも生理心理学の応用研究として非常にエキサイティングですが、特に重要なのは、楽しく運動する方法を見つけることだと思っています。高齢化が進む日本社会にとって、低コストで健康を維持するためには、運動習慣の維持が不可欠だからです。

リアクションの回収と来週の準備
  出欠記録を兼ねたリアクションの回答を本日中に記入してください。今回は、上記の流れをうけ、授業の感想に加え、「自分が興味をもっている研究テーマ」についても、あわせてリアクションに記入してください。「具体的な計画」を書いてくださっても良いですし、テーマ別過去の卒論一覧の中から、「○○のあたりにモヤッと興味を持った」、などの書き方でも構いません。来週はそれらをまとめて、今後の授業の進め方をお話します。